「描き込み」は足し算じゃない!『強弱』でイラストを仕上げる方法

デジタルアートに慣れてくると、つい画面の隅々まで細かく描き込みたくなりますよね。服のシワ、髪の毛の一本一本、背景のレンガ…。でも、細かく描き込んだはずなのに、なんだか作品全体がごちゃごちゃして見えたり、どこを見てほしいのか分からなくなってしまったりすることはありませんか?
この記事では、描き込みを「どれだけ細かく描くか」という足し算ではなく、**「どこに描き込み、どこを引くか」という『強弱』の視点から考える方法**をお伝えします。この視点を持つだけで、あなたの作品は劇的に変わります。
描き込みは『メリハリ』が命
プロのイラストには、必ず「主役」と「脇役」があります。主役は見る人の視線を集める場所、脇役は主役を引き立てる場所です。描き込みの強弱は、この「主役と脇役」を明確にするための大切なテクニックです。
すべての場所を同じように細かく描き込むと、見る人はどこに注目すればいいのか分からなくなってしまいます。逆に、主役に描き込みを集め、脇役はシンプルにすることで、作品全体に**メリハリ**が生まれ、洗練された印象になります。
描き込みの『強弱』を操るためのヒント3選
難しく考えず、まずは以下の簡単な方法から試してみましょう。作品全体を客観的に見て、「どこを際立たせたいか」を考えてみてください。
1. 『線画』の強弱で差をつける
線画は、描き込みの強弱を表現する最初のステップです。
- 主役の線画:キャラクターや一番見てほしい小道具など、主役となる部分の線は、**太く、はっきり**と描きましょう。
- 背景・遠景の線画:背景や遠くの山、建物などは、**細く、淡い線**で描きましょう。
この簡単な線の太さの使い分けだけで、イラストに奥行きが生まれ、主役が際立ちます。
2. 『情報量』の強弱で視線を集める
情報量とは、作品に描かれている要素の細かさのことです。情報量の多さで、見る人の視線をコントロールできます。
- 主役の情報量を増やす:キャラクターの瞳の中にハイライトをたくさん描き込んだり、服のシワを細かく描き込んだりして、主役の情報量を増やしてみましょう。
- 脇役の情報量を減らす:背景や影の部分は、あえてシンプルに塗りましょう。テクスチャを重ねたり、光をぼかしたりして、描き込みを抑えるのも効果的です。
描く場所と描かない場所を意識することで、あなたのイラストはより洗練されたものになります。
3. 『引き算』の勇気を持つ
描き込みすぎたと感じたときは、潔く「引き算」をする勇気を持ちましょう。これは、上級者にとって最も大切なスキルの一つです。
- 描き込んだレイヤーを非表示にしてみる:細かく描き込んだ影や模様のレイヤーを、一度非表示にしてみましょう。全体のバランスがよくなり、シンプルさが際立つことがあります。
- ぼかしツールや消しゴムを使う:不要な描き込みや、情報量を減らしたい部分をぼかしたり、消しゴムで消したりしてみましょう。
完璧な作品を目指すのではなく、描くことを楽しむために、「描き込みの強弱」という新しい視点を、ぜひ試してみてください。